10年後の社会を生きる君へ 前編 ―本当に必要な能力ってなんだろう?―

こんにちは!教務スタッフの南です。5月から夏のような日照りの日が続き、夏の訪れを実感する時期になりましたね。私自身は暑くてジメジメした気候が大の苦手ですので、これからの時期は毎日が忍耐力のトレーニングになりそうです。

さて、今回は私が先日受けたある研修で勉強になったことと私自身が感じたことを紹介しようと思います。その研修ではアメリカで製作されたドキュメント映画を観ました。この映画は、AIやロボットが社会に浸透しつつある今の時代に、社会の中で自立して幸せな生活を手に入れられる人を育てるために「今の子どもたちにどのような教育をしなければならないのか?」ということをテーマにアメリカ全土のあらゆる学校を取材し、およそ2年かけて制作されたものです。ちなみに2015年に公開されましたが劇場での一般上映がされていないため、一般にはあまり知られていない作品です。

作品の中ではある高校の取り組みにスポットを当てて、詳しく紹介しています。その高校は公立の学校ですが私たちの想像する高校とはかけ離れたシステムを取り入れています。驚きなのはその学校には「科目」が存在しないということです。生徒は一般的に行われているような数学や社会といった科目別の授業は受けません。その代わりに、生徒たちは「プロジェクト」と呼ばれる取り組みを行います。「プロジェクト」とは簡単に言うと、生徒それぞれが自らの目標に向かって主体的に行動を起こす経験を積むトレーニングのようなものです。先生の講義もありますが、大部分は生徒主体での活動です。自分たちで課題を見つけて、その解決に必要な知識や技術を自ら学んでいくのです。プロジェクトの内容は担任の先生によって自由に決められ、同じ学年でもクラスによってやることが全く違うというから驚きです。

さて、一般的な学校のような科目という概念無いため、科目ごとの学力テストというものも存在しません。生徒の評価の仕方もまたユニークなのです。この高校では一般的な定期テストの代わりに、1年に1度学習成果を発表する展示会が開かれるのです。そこには保護者だけでなく地域の住民など一般の市民も来場します。そこでの来場者からの評価が、生徒たちそして彼らを指導した教師への評価になるのです。なぜ、このような評価方式をとっているのかというと、すべては生徒の自主性を引き出すためなのだそうです。一般的なペーパーテストと比べて、大勢の人が集まる場で自分の成果を発表するというのは、生徒にとって大きな責任感を覚えたり、自己効力感を高める効果があるようで、要は頑張ろう!というモチベーションが出るやり方なのです。

映画では2つのクラスが取り上げられていました。あるクラスでは、文明の興亡の仕組みについて自分たちなりの理論を生み出し、最終的にはその理論を機械の動きだけで表現するためにクラス全体で一つの大きなカラクリ模型を製作していました。別のクラスでは宗教問題について勉強した後、生徒たちが役割分担をしてすべて手作りの演劇作品を作り上げました。その様子を見ていて驚いたのは、どの生徒も自分がやるべきことを理解し、チーム全体の目標達成のために自分で考えて行動していたことです。先生は最低限の指示を出すのみで、あとは生徒同士で協力し合いながらどんどん作業が進んでいくのです。

つまり、この学校では今まで当たり前とされてきた知識を詰め込む教育を捨て、学力テストでは測れないような能力(コミュニケーション能力、問題解決能力、創造力…)、いわゆる「ソフトスキル」を高める教育に特化しているのです。

さて、ここまでは映画に取り上げられているユニークな学校について紹介しました。しかし、勘違いしないでいただきたいのはこの学校のやり方が良いか悪いかということを論じたいわけではないということです。今回は私たちが当たり前だと思ってきた教育がすでに変わりつつあるという事実をお伝えしたかったのです。

次回は、これからの教育についてもう少し掘り下げて書いてみたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました!
初夏